ATZとTZPセラミック考察 RICHARD MILLE/リシャール・ミル

リシャールのATZ:
ATZ製のベゼルは、2,000バールの高圧で射出された酸化アルミニウム・パウダー・チューブで作られています。この高圧射出によって素材の硬度が20~30%増し、また多孔性が最大限に緩和されます。ATZは傷が付きにくく(1,400ビッカース)、変色しないことで知られており、ダイヤに次ぐ硬い素材の一つとみなされています。

リシャールのTZP:
顔料と共に酸化アルミニウム・ナノチューブ・パウダーを2,000バールの圧力下で射出した高分子のセラミック材TZP-Gが使用されており、一般的なセラミックよりも20-30%優れた剛性を誇ります。

リシャール・ミルが説明しているこの文章を読んで、
ATZ≠セラミック?
TZP=セラミック?
と、気になるというか違和感があったので調べてみました。

下記のサイトなどに掲載されている内容を参考にさせて頂きました。
・デンテックさん
・ekouhou.netさん
・X特許.comさん

ジルコニアとはチタン族元素のジルコニウムが酸化したもので、常温では白色の固体で、ある程度の光の透過性を持ち、高強度、低熱伝導率、耐食性に優れるという特徴を持っている。
しかしジルコニアのままでは温度の変化により体積変化を起こし割れてしまうので、酸化イットリウムを固溶させることにより安定化(YSZ)させる。

ベース酸化物であるZrO2の他に、安定剤を含む安定化酸化セラミックは特に好ましい。
Y2O3、CeO2または2つの安定剤の混合物は安定剤として使用される。Y2O3は5モル%までの濃度で慣習的に使用される。

安定化セラミックの質量に対して12モル%までのドーピングはCeO2によくある。
これらのZrO2セラミックは、主にイットリア安定化正方晶ジルコニア多結晶体(Y-TZP)を用いられることが多く、それぞれY-TZP(イットリウム安定化正方晶二酸化ジルコニウム多結晶体)またはCe-TZP(セリウム安定化正方晶二酸化ジルコニウム多結晶体)であり、これを単にジルコニアと呼ぶ。

なお別の型のセラミックはいわゆるセラミックマトリックス複合材(CMC)であり、これらは少なくとも2つの異なる結晶相を含有する。代表的な例はジルコニア強化アルミナ(ZTA)またはアルミナ強化ジルコニア(ATZ)であるが、他のマトリックス(例えば、SiCまたはSi3N4)もまた、この型の材料として公知である。

Y-TZPの強度は、Al2O3を加えることによってさらに増加され得る。このようなセラミックはATZ(アルミナ添加ジルコニア)と呼ばれる。
好ましいATZは80重量%のY-TZPおよび20重量%のAl2O3を含み、2,000MPaの機械的曲げ強さを有する。

ATZ=Al2O3=アルミナ?
ATZ=ZrO2-Al2O3?=アルミナ?
Y-TZP=ZrO2-Y2O3=ジルコニア?
Ce-TZP=CeO2-ZrO2=ジルコニア?

ここまで調べて全然分からなかったのでリシャールミルジャパンに問い合わせると「リシャール・ミルで使用しているATZの化学式はAl2O3です」との回答がありましてアルミナってことがわかりました。

それとリシャール・ミルが単にTZPセラミックと読んでいるのは、おそらくY-TZPのことだと思います。
と言うのも、こちらの方が着色するのに向いているらしく、TZP-ZブラウンセラミックやTZP-Zブラックセラミックを製造している事を考えればY-TZPかな、と。

カーボンナノチューブ製のベゼルはスクラッチに弱く、傷がつきやすいとの指摘を受けますが、新しいNTPTカーボンに関しては結構硬そうです。
とは言え、上記のセラミックの方が断然硬そうですし、仕上げ直しが出来ることを考えるとチタンやゴールドの方が良いのかなぁと思ったりもします。